立地と人材確保。
Landportつくばみらいは
賃貸型物流施設のハードルをどう超えるか。
EC(電子商取引)の需要増などに伴い、首都圏にリーチできる物流施設のニーズはますます高まっています。これまでもデベロッパーとして積極的に物流施設を手がけてきた野村不動産。2025年6月末には茨城県つくばみらい市に新たな拠点「Landportつくばみらい」をオープンします。
常磐道「谷田部」IC、「谷和原」IC周辺には大手荷主の物流施設が林立します。競合となる施設がいくつもあるなかで、いかに差別化をはかっていくのか。その意図を探るため、LOGISTICS TODAY編集長の赤澤裕介氏が施設の担当者である野村不動産の田邉裕美子氏、太田怜良氏を取材しました。

<左>野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業二課 太田怜良氏に聞く
物流施設が「選ばれる」のには理由がある
赤澤裕介氏(LOGISTICS TODAY編集長)
今回は2025年6月末にオープン予定の物流施設「Landportつくばみらい」について、担当者である田邉さんと太田さんにお話を伺います。まずは簡単に今までのキャリアを教えていただけますか。
田邉裕美子氏 (野村不動産 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業二課 課長代理)
私は2019年に中途入社して1年半ほどLandportの管理・運営担当として働いた後、産休・育休に入りました。私が入社したころは大手ECサイトが矢継ぎ早に拠点を増やしている最中でした。勢いのある業界に携われるということで、分かりやすくやりがいを感じることができました。今年の5月頭に営業として復帰して最初に担当したのが、この「Landportつくばみらい」です。 復帰からまだ一か月ほどですが、物流会社や荷主のお客さまの話をお聞きする中で、物流施設を構える際には、配送ルート、周辺エリアの雇用状況、取引先拠点とのバランス、荷物やトラックの種類、庫内オペレーションなど多岐に渡る条件を考慮していることがわかり、物流の奥深さに改めて触れ、やりがいと楽しさを感じている日々です。

太田怜良氏(野村不動産 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業二課)
私は4年前に新卒で野村不動産に入社して以来、ずっと物流を担当しています。物流に携わるおもしろさは立地戦略にあると感じています。テナントさまが物流施設を選ぶ際には、必ずそれなりの理由があります。工場の位置や配送先、周辺地域の人口、雇用の優位性など、施設がある地域の特性がそのまま売上につながる仕組みには魅力を感じます。
赤澤氏
物流に携わるようになってから、変わったなと思うことはありますか。
田邉氏
私は週末によく子どもと遠出をするんですが、高速を走っていると物流施設に思わず目がいくようになりました。子どもたちがトラックに興味を持ってくれないかなと思うこともありますね。気が付くと物流に関することを調べていたり、私生活までどっぷり物流に染まっています。

太田氏
私はこの仕事を始めてから東京にいることが少なくなりましたね。物流担当としていろいろな物件の営業をしているので、方々飛び回っています。なので他の物件にはない、つくばみらいの魅力もしっかり把握できているつもりです。
首都圏にリーチしやすく、労働力も確保しやすい立地
ではLandportつくばみらいが選ばれる理由はどこにあるのでしょうか。ここからは施設の詳しい情報を見ていきましょう。
「Landportつくばみらいの強みは立地にあります」と田邉氏。この施設は常磐道「谷田部」IC(インターチェンジ)からは7.1キロメートル、「谷和原」ICからは9.1キロメートルの距離にあります。周辺の物流施設と比べても、首都圏への配送距離には目立った差が
ありません。状況に応じて2つのICを使い分けられることは、入居するテナントにとって大きな強みになります。
先々の見通しも明るく、2026年には施設から3.8キロメートルの地点につくばみらいスマートICが新設されます。現在、複数の運送会社が利用する谷和原ICは混雑が問題になっていますが、新しいICが完成した暁には混雑エリアを避けることが可能になります。


土地柄、労働力を確保しやすいことも特徴です。大型物流施設が集中している地域ではしばしば労働力の奪い合いが起こります。その点、Landportつくばみらいの周辺には脅威になり得る施設が少なく、安定した雇用が見込めます。また周辺3km以内には2万人以上の人口があり、有効求人倍率は1.4となっています。つくばの有効求人倍率が2.23であることを踏まえると、より雇用を確保しやすい状況にあるといえます。今のところ大手荷主企業が進出してくる気配もなく、競合との差別化のためにパートタイム労働者などの時給が跳ね上がるようなこともないでしょう。倉庫を運営する上で絶対に無視できない、人件費という課題についても一定の解答が出ている状態です。自らも2児の母である田邉氏はつくばみらいについて「開発が進み、子育て世代が移住しつつある地域です。」と話します。そのため、当面の間は住民の高齢化による労働人口の減少も起こりにくい地域といえます。


Landportつくばみらいは災害に強い施設でもあります。この施設は国土交通省のハザードマップにおいて、津波、洪水、高潮、土砂災害、いずれのハザードにも該当しない地域です。労働者の安全確保はもとより、浸水による被害を受けにくい点は大きなアドバンテージになります。
入居後のフォローアップにも抜かりはありません。野村不動産の物流施設には、人材募集、倉庫の見える化、バース管理などのテナント向けサービスが標準装備されています。

さまざまな使い方ができる、マルチな物流施設
ここからは施設そのものに目を向けていきましょう。

Landportつくばみらいが目指すのはマルチな賃貸型物流施設です。そのため荷物の保管、EC配送など、さまざまな使い方ができるオーソドックスな造りをしています。野村不動産としてはアパレルや食品、雑貨などを扱うテナントを想定しています。
荷物の運搬を担うトラック周りのスペックとしては、1階、2階の車路にはそれぞれ屋根があり、雨天でも極力荷物を濡らすことなく荷役ができます。




1階・2階の車路にはそれぞれ屋根を設置。雨天から荷物を守りながら荷役ができる。
倉庫の利用コストを少しでも下げるため、庫内の照明には人感センサーを搭載。人がいない間は照明を落としておけるため、電気代が抑えられます。
物流施設は働いてくれる人がいるからこそ成り立つもの。そのためLandportつくばみらいは労働環境の整備にも力を入れています。
最寄駅の首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス「みらい平」駅からは徒歩18分、バスを利用しての通勤も可能です。また乗用車を70台停められる駐車場、50台分の駐輪スペースがあり、さまざまな通い方を提案することができます。

1階、2階にはそれぞれカフェテリアを設置。混雑を気にせず、各テナントさまが十分利用できるだけの広さがあります。定期的にキッチンカーを呼ぶなど、従業員の方がリフレッシュできるような取り組みにも力を入れていく予定です。
また野村不動産は年に1、2回、Landport全館を巻き込んだイベントを開催しています。たとえばクリスマスには従業員参加のフォト・大喜利コンテストを行い、特に反響が大きい投稿をし た方にはホテル宿泊券をはじめとした賞品が贈られます。太田氏は「我々からのクリスマスプレゼントだと思ってもらえればうれしいですね」と顔をほころばせます。さらに「7月には七夕の笹飾り、クリスマスにはツリー、お正月には門松など、季節ごとに装飾を変え、従業員の方の目を楽しませる工夫もしています」と太田氏は話します。
赤澤氏は最後に、田邉氏と太田氏にLandportつくばみらいの今後の展望を質問しました。
赤澤氏
Landportつくばみらいについて、お二人の今後の展望を教えてください。

田邉氏
Landportつくばみらいはまさにこれからリーシング計画が走り出す段階です。物流のリーシングではリサーチがとても大事なので、しっかり分析を進めていきたいですね。おぼろげながらターゲット像も見えてきている状況です。
太田氏
近隣からの増床を含めた移転、外資系企業のコンペなども見込めると思っています。いろいろな方に刺さる施設だと思うので、オープン前に満床を目指したいですね。