物流現場の改革後押し、自動化ソリューションも多様化時代へ【後編】
物流現場の作業の複雑化に伴い、庫内作業の各工程を自動化ソリューションに移管する作業現場も増えています。入出庫や、検品の効率化でのDXから、庫内搬送などではAGV(無人搬送車)、AMR(自律走行搬送ロボット)、AGF(自動運転フォークリフト)などの進化も早く、GTP(Goods to Person)システムによって庫内の労働環境改善と省人化を両立しようという動きも増えてきました。
ピッキング・仕分けでも、人との協働支えるロボット技術の革新続く
「ピッキング・仕分け」などの重要工程での大きな負荷となり、長時間の拘束や人的ミスの多い業務でもあった歩き回っての作業は、ロボット技術・DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用することで大きな改善が見込める領域でもあります。リストピッキングからのDXの第一歩として、完全な自動化ではなく、まずは人の働きやすさを考えた自動化は、比較的導入しやすいソリューションと言えます。デジタル管理によってピッキングや仕分けの作業性能向上とミスを削減し、人が歩き回る作業負荷を軽減することは、サービス品質の向上にもつながり、企業の価値を高める取り組みとなります。
庫内工程の完全自動化ではピースピッキングロボットの進歩も進んでいますが、現状のEC物流に対応するピースピッキングにおいては、まだまだ「人の手」に頼る現場が大多数なのかもしれません。調査会社SDKIが2023年に発表したリポートでは、2035年までに全世界でのピースピッキングロボット市場は2022年度比で63%増のペースで大きく成長すると予想しており、特に製造業での産業オートメーションや人件費の高騰への対応として進歩するとしています。確かにより繊細なグリップ技術、高度なビジョン、センシング技術や制御技術を必要とするピースピッキングロボットは、まずピッキング対象をある程度限定できる製造業での活用から伸長していくことが想像できます。多様な荷姿や掴み方に対応しなくてはいけないEC物流では、協働型ロボットとしての運用がさらに進むと考えられます。
ロボットだけによる完全自動ピッキング・搬送の前段階として、デジタルピッキングシステムやデジタルアソートシステムデジタルによる作業速度の向上、人的ミス削減、トータルピッキングとの組み合わせで作業者の働きやすさへの貢献を目指していくのが、この工程における自動化のトレンドとなりそうです。作業者のより効率的なピッキングルート、歩行距離や作業時間の最適化などを算出する倉庫管理システムなどとの連携も、効率化を進める上で、導入を検討すべきソリューションであり、倉庫の作業状況を見える化することが主眼となっています。
自動化ソリューションのさらなる普及への取り組みが、次の革新へとつながる
庫内作業の入り口や最終出口に近いところでも、自動開梱、封函、包装技術なども多数紹介され、物流現場の入庫から検品、仕分け、出庫までの各工程ごとにさまざまなアイデアを投入したソリューション開発が進んでいる状況です。DXにおいては各工程の「部分最適化」ばかりを進めたばかりに、前後工程との連携が滞り、庫内効率化に失敗した事例も聞こえてきます。まずは庫内の状況と課題をしっかりと把握し、適切な自動化ソリューションを全体として適切な工程に適宜配置、制御していく必要があります。
また、多様なソリューション提案が、かえって選択を難しくしている側面もあるようです。野村不動産が主導する物流課題解決のための企業共創の取り組み「Techrum(テクラム)」では、こうした自動化ソリューションを提供する代表的企業が多数参加し、物流施設Landport習志野に開設した「習志野 Techrum Hub」を導入効果検証拠点として、ソリューションの比較検証をワンストップでサポートしています。WMSや、搬送ロボット、ピッキング・仕分け効率化マテハンなどの代表的な製品についても、導入リスク低減のための事前検証が可能であり、リースやレンタル、ファイナンスを扱う企業も参画していることから、導入期間やコストなどの課題にも対応して、より柔軟に自動化にアプローチできる環境を整えて、ソリューションの普及をバックアップします。カタログ上ではなく、自動化ソリューションが活躍する舞台である物流施設で機能を検証できれば、より実効性の高い自動化機器の検討に役立つのではないでしょうか。また、開発側にとっては顧客との接点拡大の場ともなり、事業成長に向けた営業拡大においても、ソリューションの発展を後押しするはずです。自動化機器の普及が価格などでの導入しやすさへとつながれば、次の新たな技術革新、物流改革への道すじを示すことになるかもしれません。
2024年問題に引き続き、経済産業省が提示したDX化の停滞による経済損失を表す「2025年の崖」も意識しなければならない局面です。DXが普及しやすい環境作りなどの取り組みが自動化ソリューション導入を後押しし、物流業界全体の底上げへとつながることが期待されます。